エミュレーター特集 Vol.3『現実編』
今回のテーマは、ゲーム機エミュレーターの商業的価値ということだが、実はこの問題は「どうしてゲーム機ハードベンダーは躍起になってエミュレーターの撲滅を図るのか」(注2)という問題の解答にもつながっている。そして、ゲーム機エミュレーターの商品価値は、きわめて狭い範囲にしかないというのが私の考えだ。これには3つの根拠がある。
1つ目は、ゲーム機本体と比較してのコストパフォーマンス。PS本体が1万5千円で買える今、PSエミュレーターを8,800円(注3)で購入する人がどれほどいるだろうか。PCの性能が十分でない場合は、そのための拡張も必要となり、逆に高くなる可能性もある。
2つ目は、ハードウェア的な限界。要するに、コントローラーをつなぐポートなどがないため、専用コントローラー(注4)で遊べないという問題だ。かといってPCにポートを増設すると、これまた高くついてしまうのは避けられない。
3つ目は、動作が100%互換ではないという点。同じPSでも、型番の違いによってうまく動かない(注5)ことがあるぐらいなので、どうしても完璧なエミュレーターというのは難しい。99%完璧であっても、ひょっとしたら自分の遊びたいゲームだけは動かないかも知れない(注6)。
そして、この3つ目こそ、ハードウェアベンダーがエミュレーターを認めたくない理由でもある。100%互換ではないエミュレーターを認めてしまうと、ゲームソフトメーカーはそちらでも動作するかどうかのチェックをしなければならなくなってしまう。これは、莫大な手間がかかるものなのだ。なぜなら、エミュレーターを動かしているPCは、パーツ毎に無限の組み合わせがあるからである(注7)。
さらに、発売した後のサポートにもの凄いコストがかかる(注8)。たとえハードウェアベンダーが自分ではソフトを作っていなかったとしても、このサポート費用の増大は避けられない。
以上のことから、エミュレーターが市場で認められる日はとても遠いものであり、たとえ認められたとしても商品価値は低い(注9)といわざるを得ない。物珍しさから人気を博す状態が終わったとき、エミュレーターがどういう進化を遂げるのか。動作速度や互換性の向上よりも、そちらに興味を引かれる。
(注2)ちょっと煽りすぎ。最終回なので調子に乗っている表現が随所にみられる。
(注3)筆者予想プライス。合法的に販売するためにはライセンス料の支払いは避けられないので、結構な値段になることは間違いない。
(注4)ガンコン、パワーグローブ、ファミリートレーナー、スーパースコープなど。
(注5)3万円以上した初代PS(SCPH-1000)でFF8が動かないといった実例がある。
(注6)ショップで、自分の欲しいゲームだけ売り切れているかのような悲劇的状況といえる。最近の筆者にとってのポケステといったところか。誰か譲って下さい。
(注7)PCゲームがメジャーになれない最大の理由。ゲーム毎に、最高のクオリティを発揮できる環境が変化するという不安定さがユーザー層の拡大を阻んでいる。
(注8)PCゲームがメジャーになれない最大の理由その2。市場の拡大がそのままサポート費用の増大につながるため、巨大な市場には適さない。
(注9)GX編集部では、簡単に画面のキャプチャーができるため、非常に欲しい。
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