特集

エミュレーター特集 Vol.2『検証編』


前回のあらすじ
 禁断のエミュレーターの世界を悪びれもせず紹介したあげく、朱に交えて赤くしてやれとばかりに、PSエミュレーター「bleem!」を動作させる方法を初心者にもわかりやすく解説、これで、読者のモラルを低下せしめた。


 今回のテーマは、いろんな所(注2)から訴えられているエミュレーターだが、どこまでが違法なのかという話だ。これは、インターネットをたしなむゲームユーザーや、エミュレーター初心者にとって、重要な話である。自分の行為は果たして違法なのか合法なのか(注3)、知っておいたほうが良いだろう。

 結論からいえば、エミュレーター自身に違法性はない。ゲームの開発環境というのは早い話エミュレーターなしには成立しないし、MacでWindowsOSを動作させるエミュレーターは昔から合法的に販売(注4)されている。では、どのあたりが違法なのだろうか。

PSソフト、動く!!  それは、エミュレーターの周辺である。基本的にエミュレーターというのはただのモノマネソフトなので、それ単体ではあまり面白くない(注5)。要するに、ゲームソフトのないPSはただの箱(注6)であり、全然ダメなわけだ。

 では、どうやってエミュレーターにソフトを読み込ませるのか。問題はここから派生する。PSやSSなどのCD-ROM媒体(注7)であれば、特に問題はない。PCにはCD-ROMドライブが付いているので、直接メディアを利用できる。だが、スーパーファミコンなどのカートリッジ媒体のものはどうするのか。まさか直接PCに挿せるはずもない。データとして吸い出して(注8)、エミュレーターに読ませるしか方法がないのだ。

 データとして吸い出してしまったゲームソフトは、容易にコピーできる。デジタルデータなので、劣化もしないし、取り扱いも容易になる。さらに、昔のゲームソフトは容量も512KBなどという小ささだ(注9)。で、これをインターネット上で公開する輩がいるのである。どう考えてもこれは違法だ。さらに、BIOSデータの問題もある。ゲーム機は固有のプログラムコードが無数にあり、それを利用することで動作するエミュレーターも多い。要するに、実機から吸い出してくるわけだが、これまた、ゲームソフトデータと同様に勝手にばらまくと違法である。これらの違法行為がエミュレーターをアンダーグラウンドなものにしているといっても良い(注10)。

 では、話題のPSエミュレーター「VPS」や「bleem!」はどうして訴えられたのか。PSなのでゲームソフトデータを吸い出す必要もなく、プログラムコードの盗用もなされていない(注11)。訴えている内容は、ぶっちゃけて言うと、商売上、不当に利益を得ようとしていると難癖をつけているというようなものだ(注12)。次回(注13)は、このあたりの話をしつつ、エミュレーターの商業的価値を考えてみよう。


(注2)ソニーとか任天堂とかSCEとかNOAとかSCEAとか・・・。

(注3)えてして前者の方が面白い。

(注4)秋葉原の路上でアジア系の人達が売っているわけではないという程度の意味。

(注5)エミュレーターが動作することだけに快感を覚えるヘンタイも棲息する。

(注6)PSには音楽CDを視覚的に聴くための内蔵ソフトがあるが、誰が好きこのんでPS で音楽を聴くのだろうか。そのあたりを藤井さんに聞いてみたいものだ。

(注7)PCエンジンやNEO-GEO CD、同ZさらにはメガCD、PC-FX、3DO、プレイディアな ども存在する。DCはGD-ROMという独自方式なので普通のドライブでは読めない。 DVDドライブのドライバにパッチをあてて読めるようにするという無茶なプロ ジェクトがアングラ世界では進んでいるようだ。筆者はかなり期待している。

(注8)吸い出し行為そのものは、バックアップをとるという観点から合法である。 しかし、「吸い出し」という単語のいかがわしさはどうにかならないものか。

(注9)キロバイトではなくキロビット。1バイト=8ビット。こう考えると、ゲームソ フトのデータ量のインフレはルーブル、ペソ、バーツのそれを遙かにしのぐ。

(注10)近年話題のMP3などと同様に、こういった著作権を踏みにじる行為によって隆 盛を誇っているあたりが、性悪説を肯定しているように思えてならない。

(注11)とのこと。少なくともSCEなどはそれを信じてはいない。「参考」と「盗用」 の区別はいつの時代も難しい。

(注12)頒布件みたいなものだ。

(注13)偉いさんからクレームがつかなければ。早い話、創刊したばかりでまだ目を 付けられていない(眼中にない)からこういったことが書けるというワケ。
というわけでいよいよ創刊したGX(注1)だが、創刊号に載せる特集記事ということで、話題性に富み、インターネットならではの側面を持ち、何より紙媒体では取り上げにくい(注2)ものを選んだ。すなわちエミュレーターである。

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